女性特有の症状に対して~氣と血のバランスを取る

二七而天癸至

「女は7の倍数、男は8の倍数」というキャッチコピーをお聞きになったことがあるかと思います。
これは人の一生のライフサイクルを説明したもので、女性は7年、男性は8年ごとに身体の節目を迎えるとされています。

このコピーの原典は、2000年以上前に編纂された鍼灸の古典で『黄帝内経素問』という書籍の第一篇『上古天真論篇』に書かれている言葉です。

そこに「二七而天癸至」とあります。
二七とは、2×7=14歳という意味です。
天癸は東洋医学の用語で、現代でいう成長ホルモンや性ホルモンのようなものだと考えて下さい。
つまりこの言葉は、14歳になると身体の準備ができて、初潮を迎えると述べているのです。

生理痛、月経不順:血と氣の調整

鍼灸の故郷、中国では古代から「婦人科」がありました。
当時から女性と男性の身体の違いについて認識されていたのです。

女性には生理があり、妊娠、出産、産後、更年期を経験します。
これは男性との根本的な違いで、こうした変動を体験しながら生命活動を続けていくということが女性の特徴であると考えられます。

とりわけ生理は毎月のことであり、心身の状態が反映されます。
ストレスや多忙、疲労などが生理の状態に影響することは、殆どの女性が体験されていることでしょう。
私は鍼灸師としての経験から、男性と比べて女性は生理があることで、身体の変化を感じ取ることができている方が多いように思っています。

鍼灸、東洋医学は身体と心の状態を調えることで治療をする医療ですので、こうした変動への対応は得意とするところです。
婦人科でお悩みのある方は、ぜひ一度鍼灸をお試しになってください。

女性の身体には生理のサイクル、すなわち卵胞期、排卵期、黄体期、そして月経という4段階の周期がありますね。
鍼灸の治療は、そのサイクルがスムーズに回るようにすることを目標に行います。

生理は、東洋医学でいう「血」の動くプロセスです。
その「血」は「氣」の働きによって動きます。
この「氣」と「血」が不足したり、滞ったりすることで、生理痛が生じると考えています。
生理痛で困っている方は、冷えが強くて循環が悪くなってしまっている場合か、ストレスが強くて氣が滞ってしまっていることが多いです。

現代医学の知識を踏まえながら、東洋医学的な診立てをして、それぞれの方のタイプに応じたツボを選んで施術をいたします。

陰陽論

陰陽では男性を陽、女性を陰に配当します。
これは男性が外で働き、女性が家にいるからとか、女性は男性に比べて大人しいものだからといったことではありません。そうした認識は大きな誤解であって、陰陽は女性の生き方に圧力をかけるような思想ではないのです。

女性と男性の明らかな違いは生殖器です。
男性の生殖器は外に出ているので陽、女性はお腹の中に生殖器があるので陰となります。
また女性は妊娠します。お腹の中で赤ちゃんを慈しみ育んでいきます。
「慈」とは幼い子を大事に育てる心のことです。これも陰の働きだと言えます。

冷え性あるいは冷え症

陰の働きがスムーズに進むためには陽の氣が必要です。
陽の氣をしっかり養って、冷えないようにすることが大切なのです。

日本には「冷えは万病のもと」ということわざがあり、健康のためには身体を冷やさないことが大切という考えは常識として受け入れられています。

手足にいつも冷えを感じていて、『冷え性』に悩まされているという方は多くいらっしゃいます。
冷え性には、『冷え性』あるいは『冷え症』と2種類の表記があります。
『冷え性』は「冷える性質」ということですから、体質的に冷えやすいということでしょうか。
『冷え症』の方は症状ですね。腰が痛いのを腰痛症と称することから、「冷え」という症状が出ていることを指しているのだと思います。
『冷え症』も一時的というより慢性的に冷えている場合に使われる用語ですから、2つの名称にはあまり差はないのかもしれません。

冷え症というと病気のようですが、現代医学ではそのような疾患名は無く、病気として扱われていません。
不定愁訴(原因となる病気のない自覚症状のこと)の1つとされています。

冷え性のタイプ

東洋医学では冷えを重視しています。
帰来堂鍼灸療院では施術の前には必ず足の冷えを確認します。

一般に冷え症には4つのタイプがあると言われています。
  • 手足の冷えるタイプ
  • 身体全体が冷えるタイプ
  • お腹が冷えるタイプ
  • 冷えのぼせタイプ
冷え症を自覚している方は、寒さに弱く、手足の冷えか全身に冷えを感じるといわれることが多いと思います。

冷えのぼせの方は、のぼせている方に意識が行っていて、冷えに気付かないことがよくあります。
手足がほてって熱いという方も多く、そういうときは身体の内側に強い冷えがあることが多いのです。

冷え~陽気の不足

鍼灸、東洋医学では、冷えとは陽の不足です。
陽とは、からだを温める働きのことですので、陽が不足すると温めることができなくて冷えてしまいます。

陽が不足するということは、血液の循環がよくなかったり、水分の代謝が悪くなったりして、総じて循環を良くする必要があることが多いです。

鍼灸治療では、全身の循環をよくすること、腎や消化器の状態を調えることを目標に施術をいたします。
手足のツボを用いて氣が巡るようにしたり、腰やお腹を心地よく温めるお灸をしたりします。

緊張が続くと、ストレスから自律神経のバランスが崩れて、結果として冷え症になってしまうということもよくあります。
全身治療でゆっくりとリラックスできる鍼灸治療をぜひお試しください。

冷えとり健康法

帰来堂鍼灸療院では、ご自分でできる『冷えとり健康法』をおすすめしています。
『冷えとり健康法』は進藤義晴医師が長年の臨床経験に東洋医学の哲学を導入して提唱された方法です。

冷えとり健康法の基本は
  • 半身浴
  • 靴下の重ね履き
  • 正しい食事
  • 心穏やかに暮らす
というものです。

何も特別なものを必要としない、平凡で健全な生活を保つことが心身の健康につながるという健康法です。
ぜひお試しになって下さい。

帰来堂鍼灸療院では冷えとり健康法を実践するための絹五本指靴下などを取り揃えております。
当院の「冷えとり健康法」についてはこちらもご覧ください。