シリーズ医療革命「腰痛・治療革命」~見えてきた痛みのメカニズム~
こんにちは。
帰来堂鍼灸療院(千種区池下)の坂光です。
昨日NHKBSでシリーズ医療革命「腰痛・治療革命」という番組が放送されましたので、録画して早速観てみました。
番組は
治療しても効果がなく、一度治ってもぶり返すなど長引く「慢性腰痛」に苦しむ人は1400万人と推定されます。最先端の治療現場では、「脳」のある働きを改善し、慢性腰痛を克服する対策が、大きな成果をあげています。例えば腰痛への不安を解消する映像を見たり、恐怖心を克服する運動をするなどの対策を取るだけで、改善する人たちがいます。専門的な心理療法で、極めて重い症状の患者の腰痛が改善するケースも出始めています。
ということで、とても興味深い内容でした。(NHKホームページより)
ところが、観終ってからネットで調べると、どうやらこの番組は2年前のNHKスペシャルの再放送のようです。
番組の感想を書いてあるブログもいくつかありました。鍼灸師や整体をやっている方のブログを読んでみましたが、内容については同感でした。
慢性腰痛
慢性腰痛とは、腰の痛みや疲労が3か月以上持続している腰痛症のことなのですが、この番組で取り上げているのは非特異的慢性腰痛という原因が特定できない腰痛のことです。
原因が特定できないとは、検査をしても腰痛を起こすような異常を見つけられないということです。
「整形外科で診てもらったけれど、特に異常はないと言われた。でも腰が痛い。」
このようなことで帰来堂鍼灸療院にいらっしゃる方は多いです。
腰痛については、上記のような慢性腰痛の方に加えて、ぎっくり腰、坐骨神経痛、冷え症や生理痛に伴う腰の痛み、脊椎狭窄症や椎間板ヘルニアがあって腰が痛い方がよく見られます。
腰痛と脳のDLPFC(背外側前頭前野)の関係
番組によれば、カナダの大学で慢性腰痛を訴える患者を調べてある共通点を発見したのだそうで、慢性腰痛患者は共通して脳内にあるDLPFC(背外側前頭前野)活動が弱っているというのです。
DLPFCは人間の判断や意欲などを司っていて、脳内で作られた『痛い』というシグナルを鎮める役割を果たします。
DLPFCは痛みの原因となる炎症などが治まると、痛みを鎮めるという信号を出します。
ところが、DLPFCの働きが衰えると、脳が生み出す「痛い」という感覚を鎮めることができなくなり、たとえ炎症が治まっても痛みが継続してしまうということで、つまり、慢性腰痛の痛みとは、脳が作り出す“幻の痛み”だったというのです。(livedoor NEWS「慢性腰痛は脳が作り出す幻? 痛みを抑えるDLPFCが恐怖心で衰える」より)
つまり、慢性腰痛の場合は、腰の痛みに対する恐怖がDLPFCに悪影響を及ぼし、その結果として「腰は悪くないのに痛みをいつまでも感じる」ようになっているのです。
DLPFCの働きが衰える大きな原因は「不安」と「恐怖」にあり、不安や恐怖によるストレスがDLPFCが機能を低下させるとのことです。
ですから、「腰痛への不安を解消する映像を見たり、腰が痛くなったらどうしようという恐怖心を克服する運動をするなどの対策」によって腰痛に対する恐怖が克服され、DLPFCの機能が回復し、腰痛が改善するということでした。
番組では、腰痛のメカニズムを学ぶことで趣味のサイクリングを再開できた方や、運動をして腰痛にならないことを知って、腰痛ベルトが必要なくなった介護職の方々などが紹介され、なかなか説得力がありました。
とはいえ、番組を見て、釈然としない気持ちが残ったのも正直なところです。
テレビというのは複雑な事柄を単純化して提示するものですし、視聴者の興味を掻き立てるために総じてセンセーショナルになりがちだと思います。
心身一如:こころとからだのバランスを取る鍼灸治療
ただ、不安感や恐怖感の強い人は治療の効果が出にくい、ということは臨床の場で常々感じてきたことです。
帰来堂鍼灸療院の鍼灸治療では、患者さんのお話をしっかり伺い、患者さんの気持ちに寄り添って診療することを心がけています。
そして、東洋医学、冷えとり健康法、現代医学などについて私が持っている知識と経験をわかりやすくお伝えすることで、患者さんに安心して治療を受けて頂けるようにしています。
鍼灸の施術も、痛みのあるところをきちんと確認し、症状をとるためのツボを選ぶことに加えて、全身を調整し、心身の緊張も和らげることを目的としたツボも必ず使います。
鍼灸医学、冷えとり健康法においては、心身一如で、全体を治療することが必要との考えによって治療をいたします。
はりきゅうの施術をリラックスして受けていただき、気持ちよく感じて頂けると、治療の効果も満足のいくものになることが多いです。
反対にうまくいかないケースは、不安感や恐怖感の強い方で、私の知識が不十分だったり、対応にご満足頂けないような場合だと思います。
特に、痛みや症状に対する恐怖が強い方は、まず不安感から先に取り除いていかないといけません。
こうしたことは、私だけでなく鍼灸の臨床家が一般に感じていることではないかとも思います。
今回の番組はタイトルに”革命”という言葉を使っていますが、ちょっと言い過ぎ?と思わないでもありません。
恐怖心と痛みの問題は、臨床の中でよく感じられることです。
今回、DLPFCの研究によって、私たちが感じていたことに科学的な裏付けを与えて頂けたという感じではないでしょうか。
研究が進んで、鍼灸治療によってDLPFCが活性化できるといったことが明らかになったりするかもしれませんね。