中医薬大学全国共通教材 全訳 中医基礎理論 監修 戴毅/翻訳 淺野周

この本の冒頭に
古代中国には、唯物論と辯証法思想の一種である陰陽五行説があった。
唯物論とは、世界は物質からできており、霊魂を含めた森羅万象が物質の変化によって発生するとする考え方で、無神論の一種である。
とあります。

陰陽五行論は鍼灸医学の根幹をなす考え方です。
鍼灸医学においては、人体は陰陽五行に沿った構造をしていると考え、陰陽五行から生理、病理を考えます。
人体の中心は、肝、心、脾、肺、腎の五臓であり、五臓はそれぞれ五行の木、火、土、金、水に配当されています。

『霊魂を含めた森羅万象が物質の変化によって発生するとする考え方』とあるように、人間の霊性も精神も陰陽五行論の中で考えます。東洋医学は心身一如と言われる所以です。

心身一如とはgoo辞書に『仏教で、肉体と精神は一体のもので、分けることができず、一つのものの両面であるということ。』とあります。

鍼灸治療においては、心の問題と身体の問題を分けて考えることはせず、相互に関連し合ったものとして診療をいたします。ですから例えばストレスが原因で身体に変調をきたしているような場合、身体全体を鍼灸治療で調えることで心も身体もすっきりするというような効果が得られます。

鍼灸医学の理論では、陰陽と五行の二つの観点から診ますので、身体の症状(例えば頸の痛みや不眠、生理痛など)も心の有り様(イライラする、不安感がある)もどちらも陰陽五行論で解釈します。

これはきっと仏教の心身一如とは異なる考え方なのでしょう。
『中医基礎理論』の陰陽五行説は唯物論の一種という説明は、腑に落ちるものでした。

鍼灸は、心と身体を包括的に捉えて、全身のバランスを調える治療です。
帰来堂では鍼灸の特性を生かして、皆様のお役に立って参ります。