昨日4月6日の中日新聞夕刊に作家の村田喜代子さんの「光る針」というエッセーが掲載されていたのをご覧になった方もあるでしょう。

内容をかいつまんでご紹介しますと、
村田さんはひどい花粉症に困っていて、花粉の舞う季節に先駆けて鍼を打っておくことで対応することにしていた。
ところが今年は予め鍼に行くことができず、ひどい症状が出てしまった。
そんなときある会合でたまたま同席した鍼灸師の老婦人の鍼を受けることになり、おかげで楽になった。

という感じです。

このエッセーにある通り、鍼には即効性があり、花粉症の症状もうまく抑えられることがあります。
でも一般に鍼治療というのは敷居が高いようで、花粉症に悩む方は年々増えていても、鍼を試す人はそれほど多くないように思えます。
残念なことです。

このエッセーでも
後で周囲の人に聞くと、鍼を打たれている間に腫れぼったかった私の顔が急にクッと締まったという。
みんなも滅多にないことで、固唾を呑んで観察していたのだろう。

とあり、皆さんが鍼に縁遠いことがわかります。

このエッセーの主なテーマは鍼のことより、その老婦人の美しい佇まいを描くことにあるようなのですが、
ともあれこうして鍼の効果を文章にして発表してくださって村田喜代子さんには感謝します。

毛のように細い鍼が前髪の生え際から上へと何本か打たれた、チクリとする針も、まるで感じない針もある。
と書かれているように(やはり作家というのは表現が上手ですね。)針は全然痛くないとはいいませんが、決してそう恐ろしいものではありません。
花粉症の方はぜひお試しいただきたいものです。

八つの小鍋―村田喜代子傑作短篇集

鍼で自律神経を調える

花粉症に関しては薬を飲んで対応している方が多いと思いますが、やはり薬には副作用があります。
薬も鍼も症状を抑えるメカニズムとしては自律神経のコントロールによるものだと思いますが、作用する仕組が違います。
薬が強制的に副交感神経を抑制するのに対して、鍼治療は自前の自律神経調節機能を促すのです。

WHO(世界保健機構)も自律神経失調症や呼吸器系疾患、耳鼻咽喉科系疾患に対する鍼治療の有効性を認めています。
鍼灸の自律神経調節効果はそれだけ高いのです。

薬は身体を強制的に交感神経優位の状態にもっていきますので、それだけくしゃみや鼻水を押さえる効果は鋭いです。
でもそれはやはり身体には負担がかかるものです。

鍼灸治療の場合は、もともと誰もが持っている自然の調節機能を引き出すことによる効果ですから
バランスを大きく崩している方の場合など、すぐに効果が表れないケースもありますが、
ストレスを和らげる効用もあり、心にも身体にも優しい治療です。

そしてなにより治療を続けることにより自律神経調節機能が高まるので、だんだんと花粉症が出にくくなることが期待できます。
このように自然治癒力を引き出すということが鍼灸治療の最大の利点です。

そのために村田さんのエッセーでもあるように「花粉の舞う季節に先駆けて」治療を始めることが大切なのです。

花粉症は大変辛いものですが、出てきた辛い症状をとにかく抑えればよいということではなく、花粉症を身体全体の問題としてとらえて、心身を調えることで対応していくことをお考えいただけたらと思います。

参考:all about  副作用?花粉症の薬でのどが渇く