Quelling Anger 〜怒りを抑える『実践ビジネス英語』より

NHKラジオ第二で放送している『実践ビジネス英語』5月のLesson 4は「Quelling Anger 〜怒りを抑える」と題して、Anger Room (怒りの部屋)を取り上げていました。

鍼灸治療を受ける患者さんで職場でのストレスに悩んでいらっしゃる方は多くいらっしゃいます。
その意味でも興味深い内容です。

Anger Roomとはアメリカで広まっているサービスで、そこにあるテレビ、家具、パソコン、食器といったものを破壊することでストレスを発散できます。
怒りを抱えた人が顧客で、お金を払ってその部屋にあるものを壊すのです。

以前テレビで、お皿を壁に投げつけてストレスを発散させてくれる店というのを観た覚えがあります。
Anger Roomでは、家具とかもっと大きなものも壊すので、エネルギーの発散も大きそうです。

こちらの記事を読むと、大体感じがわかります。
「怒り」を商品にした変わったビジネス、ANGER ROOM

YRU Still Here/Marc Ribot’s Ceramic Dog

Take a deep breath and count to ten~深呼吸して10まで数える

ただ有体に言って、『実践ビジネス英語』では、会話はそんなに深いところにはいきません。
深い会話になると、それだけ英会話の水準も上がるし、会話自体も長くなりがちですから、番組としてまとまらないからではないかと思います。

さて、ビニエットでは「前の職場で働いていたころ、何度かサービスを利用したことがある」という男性が登場します。

“One thing I can say for certain is that going to an anger room let me deal with some very negative energy I built up by channeling it in a safe and non-threatening way.
1つ言えることは、怒りの部屋に行くことで、心の中に積み上がったとても否定的なエネルギーを安全で威嚇的でない方法で発散させることで、それに対処できるということだ”
と説明します。

話を聞いた同僚たちは
「Anger roomには実際に有効なの?」
「怒りの原因に向かい合うのを先延ばしにしているだけなのでは?」
「自分だったら、昔ながらの”Take a deep breath and count to ten”にするかな。」
「ヨガのポーズで怒りを緩和できるものもあるわよ。」
などと口々にAnger roomに否定的な反応を示します。

男性はせっかく「怒りの部屋に時々行っていた」という、あまり大きな声では言いたくなさそうな話を打ち明けたのに、こんな風にもっともらしいことばかり言われてしまって、ちょっと気の毒です。
どうにも感情を抑えきれないような状態にまで追い込まれているからこそ、怒りの部屋に行ったのでしょうから。

”Take a deep breath and count to ten~深呼吸して10まで数えてみて”というのは、「落ち着いて!」と言う時によく使われる英語表現みたいです。
確かに感情的になった時には一旦間を置くことは大事ですね。
メールで苦情を伝える時などに思い出したい言葉です。

It’s not so easy to deal with the root cause of your anger.~怒りの根本原因に向かい合うのはそんなに簡単ではない

ビニエットの中での男性の返答は
But as you’ve pointed out, I wasn’t dealing with the root cause of my anger.
でも、皆さんのご指摘のように、私は自分の怒りの根本的な原因に向き合っていませんでした。
という物分かりのよいもので、「今週のキーフレーズ」になっています。

確かに、怒りの根本原因にきちんと向かい合って、何が自分を怒らせているのかを知るのは大切なことです。

腹を立てる理由をよく考えてみると、過去の経験やコンプレックスなどを刺激されたから、ということもよくあることです。

ビニエットの男性も、怒りの原因は会社や上司にあるのではなく、自分の心の中にある欲求不満が基になっていることに気づいてからは、怒りに上手に対処できるようになり、”Regain my peace of mind(心の平安を取りもどす)”ことができたと話しています。

でも、自分の内にある怒りの原因がわかったからと言って、それで感情的にならないようになるかと言えば、そう簡単にはいかないように思えます。

内的な原因であれば、子どもの頃の経験やトラウマ、劣等感、自己否定などと複雑に結びついていることが多いのではないでしょうか?

鍼灸による「怒り」への対応~自分と折り合いをつける:Is it hard to make arrangements with yourself?

帰来堂鍼灸療院にいらっしゃる患者さんで、ストレスや怒りを抱えている方は多いです。
ストレスの多い社会ですから当然でしょう。

東洋医学では、怒りの感情は肝と結びつけています。
肝の氣の失調によって怒りっぽくなるということです。
それほどの事でもないのに、妙にイライラしてしまうような状態です。

鍼灸治療では、怒りやイライラに対して肝を中心にそれに関連したツボを選んで施術します。
イライラしやすい時は心身ともに緊張しているものですから、緩めてリラックスできることを目標にします。
頸の凝りを緩めると、それだけで少し余裕のある考え方ができるようになるものです。

こうした治療は怒りの根本原因の解決、内的な原因と向かい合って乗り越えることとは別の方法です。
東洋医学の思想から言えば、即座に原因に対応するよりも、自然な流れの中で解消できるように導く方がよいということになると思います。

直接ぶつかることによって軋轢がより大きくなってしまうこともあるでしょう。
内的な問題を抱えている自分と上手く折り合いをつけて生きていくことが大切なのではないでしょうか?
問題がある自分を受け入れるということですが、それには時間がかかります。

Is it hard to make arrangements with yourself, when you’re old enough to repay but young enough to sell?(Neil Young “Tell me why”)
自分と折り合いをつけるのは大変だよね。やり直すには年を取り過ぎているし、諦めるには若すぎる。
ニール・ヤングのヒット曲の一節です。