シナブロ

シナブロというのは韓国の言葉で「知らぬ間に少しずつ」という意味なのだそうだ。
シ ナブロ』という本があり、副題を「若い韓国を知る本」という。

“私たちは少しずつ変化しているが、それは本人も気付かないほどほんの少しなので毎日の自分はあまり変化を感じない。しかし、何年か経ってみると大きな変化になっている。”
“韓国と日本は知らぬ間に少しずつ仲良くなってくれるのではないだろうか。『シナブロ』という題は、そんな願いを込めたものである。”(「はじめに」より)

著者は『シナブロ』という題名についてこのようなことを記している。
「知らぬ間に少しずつ」世界がよりよい場所になっていくのは素敵なことだと思う。
少なくとも大言壮語した挙句に結果はさっぱり、みたいなのよりずっと良いし、地に足が着いている感じだ。

冷え取り健康法も『万病を治す冷えとり健康法』が出版されたのが1988年だから、もう20年以上になる。
進藤義晴先生が医院で冷えとりを提唱しはじめたのはおそらく30年近く前のことだろう。

自分が知っているこの20年間に、冷えとりの考え方に対する認知度は大きく変わった。
デパートの発行している雑誌に絹の五本指靴下が載っていて、そこに「冬には綿の靴下を重ねて履くのもおすすめ」などというコメントが添えられているのだから。
かつては五本指の靴下を履く、しかも重ね履きをするなどというとずい分変な顔をされたものだ。
冷え取りを始めるにはまず常識を転換してもらわなくてはならなかった。

毒出しにしてもそうだ。
「症状イコール病気。症状は忌むべき不快なもので押さえ込むか取り除くべきもの。症状がなくなれば病気は治った」というのが当時の常識だったのだから。
症状としては同じように見えても、冷え取りをして出てきた場合は内部の毒が出てきたのだから、病気が悪化したのではない。むしろ内部は改善しているのだ。症状イコール病気ではない。そんな話を何度もしなくてはならなかった。
毒出しとか瞑眩とかいうとうさんくさそうに見られたものだ。
「治療に来て、却って症状が出てきたのでは逆効果じゃないか。」と言われたこともある。

それが今では「デトックス」ということで歓迎されている。
毒出し効果抜群!なんて。

勉強会での話

鍼灸師の免許を取ったばかりの十数年前、毎月1回の進藤先生の勉強会に出ていた。
治療の事にとどまらず様々な話を聴かせて頂き、大いに影響を受けた。

当時から先生は「自分が有名になる必要はない。自分のやり方がなんとなく世の中に知れ渡っていくのがよい。」とよく言っておられた。

健康法でも広まってくると段々組織が大きくなり、創始者が神格化され、古株の会員が威張りだす。
マスメディアにちやほやされたりもする。
そのうちお金儲けのために本質を見失い、何かトラブルを起こしてつぶされてしまう。
健康法には素晴らしい点もあったのに、スキャンダルとともに忘れられてしまう。
そのようなことは昔からよくあることだ。
だからそんな風にならないように、名前を知られるのではなく、やり方がなんとなく知られていくのがよい。

当時はそんなものかなと思っていたが、今になってみると先生の言ったとおりだ。
「冷えとり」で検索しても進藤先生の名前はなかなか出てこない。
「冷えとり」や「半身浴」の専門家は数多くいて、本もたくさん出ている。

五本指靴下、靴下の重ね履き、半身浴、毒出し

以前はこうした言葉を一から説明しなくてはならなかった。
知らない間に少しずつ浸透して、今では誰もが知っている。
しかしきちんと理解している人は少ない。考え方をしっかりお伝えするのも治療家の仕事なのだろう。